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大豆の湿害対策|症状の見分け方と大雨後・播種前の排水管理

大豆を播種した後に雨が続き、芽がそろわない。
圃場の低い場所だけ葉が黄色くなり、生育が遅れている。

こうした症状が見られる場合は、土壌の過湿による「湿害」が疑われます。

大豆は水田転換畑で栽培されることが多く、播種期や生育初期が梅雨と重なる地域では、排水能力の低い圃場ほど出芽不良や生育停滞が起こりやすくなります。

湿害が疑われたら、肥料や資材を追加する前に、圃場内のどこで水が止まっているかを確認し、圃場外へ排出する経路を確保します。

この記事では、大豆の湿害で起こる症状と原因、発生後に確認したいポイント、湿害を繰り返す圃場での排水対策について解説します。

大豆の湿害で起こる症状と原因

大豆の湿害は、圃場に余分な水がたまり、種子や根の周囲が過湿になることで起こります。土の隙間が水で満たされると根圏で酸素が不足し、根の生育や養水分の吸収が妨げられます。

ただし、播種から出芽までの障害には、酸素不足だけでなく、急激な吸水による子葉の損傷、土壌表面が硬く締まる土膜の形成、土壌病原菌の感染も関係します。複数の要因が重なっている可能性を考えながら、種子や株、圃場の状態を確認する必要があります。

播種直後は出芽不良や欠株が起こる

播種直後の大豆は、過剰な水分の影響を受けやすい時期です。

種子の周囲に水がたまると、低酸素によって発芽に必要な代謝が滞ります。さらに、乾燥した種子が急激に水を吸うと、細胞の変化が水の侵入に追いつかず、子葉に亀裂や損傷が生じることがあります。

短時間の冠水であっても、影響が小さいとは限りません。

「里のほほえみ」の特定の種子ロットを用いた試験では、10分間の冠水後、通常の吸水をした種子の出芽率が93.3%だったのに対し、過剰に吸水した種子では53.3%または23.3%となりました。30分間の冠水後も、通常吸水種子は90%以上を維持しましたが、過剰吸水種子は30%以下まで低下しています。

ただし、同じロットの種子でも吸水の仕方には個体差があります。試験結果も特定の品種と種子ロットによるものであり、「何分冠水したら必ず被害が出る」と一律には判断できません。

播種後に雨が続いた場合は、芽が出ない場所がまとまっていないか、出芽時期がそろっているかを見ます。子葉が地表に出る前に腐敗していたり、低地や轍跡に沿って欠株が生じていたりする場合は、播種溝や畝間に水が残っていないかも確認します。

低い場所や水がたまった場所に欠株が集中している場合は、種子の品質だけでなく、吸水障害や排水不良、土壌病原菌の関与も疑います。

出芽後は黄化や生育停滞が起こる

出芽後も土壌の過湿状態が続くと、根の生育が妨げられます。

根が十分に働かなくなると、水分や養分を吸収しにくくなり、葉色が薄くなる、草丈が伸びない、葉の展開が遅れるといった症状が現れます。根や根粒も低酸素の影響を受けるため、窒素栄養が不足したように見えることがあります。

晴天時にも葉がしおれ、根の量が少ない、褐色や黒色に変わっているといった状態も、湿害を受けた株で見られる症状です。こうした生育不良が圃場の低い部分に偏っている場合は、排水不良の影響が疑われます。

ただし、黄化や生育停滞は、肥料不足や土壌pH、病害でも起こります。降雨後に現れたか、低地や滞水部分に偏っているかを見て、湿害の可能性を切り分けます。

水が引いた後も枯れる場合は病害も疑う

出芽不良や株の枯死は、過剰な水と酸素不足だけで起きているとは限りません。

排水不良の圃場では、湛水によって種子や株が弱るとともに、水中を移動する遊走子を形成する卵菌類などが感染しやすくなります。出芽できなかった種子を掘り出したとき、子葉が褐色に変色していたり、軟化・腐敗していたりする場合は、土壌病原菌が関係している可能性があります。

代表的な病害の一つがダイズ茎疫病です。

茎疫病では、地際部から上方へ連続する褐変が現れ、葉の黄化、下垂、萎れを経て枯死します。出芽前から開花期以降まで発生しますが、とくに出芽期とその直後は感染の影響を受けやすく、土壌水分が高いほど発生しやすくなります。

水が引いた後も枯死が増えている場合は、子葉の軟化や腐敗、根や地際部の褐変を確認します。とくに地際部から上方へ褐変が続き、黄化に加えて葉の下垂や萎れが見られる場合は、茎疫病などの可能性があります。

症状だけで病害を特定するのは難しいため、被害が拡大している場合は、株や根の写真を残し、地域の農業改良普及センターやJAなどへ相談しましょう。

大豆に湿害が発生したときの対処法

大豆圃場で畝間の水を明渠と排水口へ流す排水経路

湿害が発生した後は、根を回復させる方法を考える前に、圃場内に残っている水を排出します。

大雨直後は、水路の増水や地盤の緩みなどによる危険もあります。気象情報と周囲の安全を確認し、危険な状態では圃場や排水路へ近づかないでください。

まず排水口と明渠を確認して水を抜く

最初に確認するのは、圃場内の水が排水口まで流れているかどうかです。

明渠を設けていても、途中で溝が途切れていたり、排水口が高すぎたりすれば、水は圃場外へ出ていきません。排水路の水位が高い場合は、暗渠から水が抜けないだけでなく、逆流するおそれもあります。

大雨後は、次の点を確認します。

  • 排水口が土や草、作物残さでふさがっていないか
  • 排水口が圃場表面より高くなっていないか
  • 排水路の水位が高く、流出を妨げていないか
  • 畝間や圃場内の溝が額縁明渠につながっているか
  • 額縁明渠から排水路まで水が流れているか
  • 圃場内に水が止まるくぼみがないか
  • 長い畝や轍跡が水の流れを遮っていないか
  • 隣接する水田や高い場所から水が流入していないか

水が止まっている場所があれば、安全を確保したうえで溝をつなぎ、排水口まで水の流れをつくります。

短時間で圃場の水を排出するには、暗渠だけに頼らず、地表排水を機能させることが欠かせません。一般に地表排水は地下排水より排水能力が高く、降雨強度が高いほど重要性が増します。

出芽状況と被害範囲から再播種を判断する

播種直後に湿害を受けた場合は、芽が出るのを待ち続けるのではなく、出芽数と欠株の分布を確認します。

圃場全体を一度見ただけでは判断しにくいため、複数の場所で一定距離当たりの株数を数え、健全部分と被害部分を比べます。

再播種は、残っている株数と欠株の広がり、生き残った株の状態を見て判断します。あわせて、地域や品種ごとの播種晩限と、再播種後に確保できる生育期間も確認します。

種子や作業機を準備できるか、再び降雨を受ける可能性があるか、出芽不良に病害が関係していないかも判断材料です。茎疫病などによって苗立ち不良が広がると、再播種が必要になる場合もあります。

再播種できる時期や必要な播種量は、地域、品種、栽培体系によって異なります。地域の栽培指針や普及機関の情報を確認し、判断を長く先送りしないことが大切です。

黄化だけで肥料不足と決めず、根や圃場の状態を確認する

湿害を受けた大豆は、根の吸収機能や根粒の働きが低下し、肥料不足に似た黄化症状を示すことがあります。

根の周囲で酸素が不足している状態では、肥料を追加しても湿害の原因そのものは解消されません。

黄化が見られたら、まず症状が低地や滞水部分に偏っているかを見ます。次に、健全部分と根の量や色を比べ、圃場内に水が残っていないか、根や地際部に病害を疑う変色がないかを確認します。排水後は、新しく展開する葉に回復が見られるかも観察します。

地際部から上方へ続く褐変や、黄化に伴う下垂・萎れが見られる場合は、茎疫病などの病害も疑います。圃場全体で均一に黄化している場合は、土壌の肥沃度やpH、根粒菌の着生、施肥設計など、湿害以外の要因も含めて判断します。

湿害を繰り返す圃場の排水対策

大豆圃場の地表排水・暗渠排水・心土破砕の使い分けを示す図解

毎年同じ場所で湿害が起こる場合は、降雨量だけを原因と考えず、圃場内外の水の動きを確認します。

圃場の水分環境は、地形、土壌、排水口の高さ、排水路の水位、暗渠の配置、周辺からの浸入水などによって異なります。すべての圃場に同じ排水対策が適するわけではありません。

対策は、地表にたまった水を流す「地表排水」と、土の中の水を抜く「地下排水」に分けて考えます。

被害場所と水の流れを記録する

排水対策を考えるには、圃場内のどこで水が止まり、どこから入り、どの方向へ流れているのかを把握する必要があります。

大雨の後は、水が長く残った場所と、出芽不良や黄化が発生した場所を圃場図や写真に残します。低地、轍跡、排水口から遠い場所だけでなく、隣接する水田や山側から水が流れ込んでいないかも記録しておくと、次作の排水対策に役立ちます。

健全部分と被害部分を同じ角度から撮影しておけば、生育差と排水条件を比べやすくなります。

雨がやんで数日たってからだけでなく、降雨中や雨の直後に、水がどこへ集まっているかを安全な場所から確認すると、排水経路の問題を見つけやすくなります。

地表排水は明渠と排水口をつなげる

集中豪雨や短時間の強い雨に対しては、まず地表排水を整えます。

圃場の周囲に額縁明渠を設け、畝間や圃場内の明渠を接続し、排水口まで水が流れる状態をつくります。

溝の本数を増やすだけでは、十分な排水にはつながりません。畝間の溝、圃場内明渠、額縁明渠、排水口が途中で途切れずにつながり、水が流れる深さと勾配を確保できていることが前提です。

排水口や排水路の水位が高い場合、雑草や土砂がたまっている場合も、水の流れは妨げられます。

大区画圃場では、周囲の額縁明渠だけでなく、圃場内に中明渠を設ける方法があります。長い畝が水の流れを止めている場合は、途中で畝を切り、表面水が明渠へ流れる経路を確保します。

明渠は施工後も、崩れや雑草、土砂の堆積によって流れが悪くなります。播種前だけでなく、大雨の前後にも点検します。

地下排水は暗渠や心土破砕を検討する

地表の水が引いても土壌の過湿状態が長く続く場合は、地下排水や土の締まりを確認します。

暗渠と心土破砕では、対応する圃場条件が異なります。

地下水位が高く、下層まで過湿になっている圃場では、圃場全体の地下水位を下げるために暗渠排水が中心になります。

一方、地下水位は低いものの、水田のすき床が難透水層となって水を止めている圃場では、心土破砕によってすき床の透水性を改善する方法が優先されます。

本暗渠が施工されている圃場では、排水口から水が出ているか、暗渠管が詰まっていないかを確かめます。すき床の締まりや排水路の水位が、暗渠への水の移動や流出を妨げている場合もあります。

暗渠の効果を高める方法としては、弾丸暗渠などの補助暗渠、心土破砕、暗渠管の清掃などがあります。暗渠のない圃場で整備が難しい場合は、深い額縁明渠と補助暗渠を組み合わせて排水する方法も検討します。

ただし、単に深く爪を入れれば排水が改善するわけではありません。

土質、耕盤層の深さと厚さ、地下水位、既存暗渠の位置、施工後の水の出口によって、適切な方法は変わります。圃場条件を確認したうえで、地域の指導機関や施工事業者に相談しましょう。

排水が難しい圃場では畝立て播種を検討する

地下水位が高い圃場や、十分な排水先を確保しにくい圃場では、種子を高い位置に播く畝立て播種も選択肢になります。

畝立て播種では、滞水面と種子や根との距離を確保できるため、播種直後の種子が冠水するリスクを抑えられます。

短時間冠水の試験をまとめた資料でも、種子が冠水しにくい環境を整える播種方法が対策として挙げられています。ただし、効果は耕うん後の土壌状態や圃場の排水性によって異なります。

畝間にたまった水を額縁明渠や排水口へ流せなければ、圃場内の過湿状態は続きます。畝立て播種と地表排水は、セットで考えます。

また、高い位置へ播種すると、乾燥時に土壌水分が不足する可能性もあります。土質、播種時の土壌水分、降雨予報、保有する播種機などを踏まえて導入を判断してください。

排水後の補助策として酸素供給資材を活用する

圃場から水を排出した後も、根域の酸素不足が懸念される場合は、酸素供給資材を補助的に使用する方法があります。

ただし、酸素供給資材と排水対策では、役割が異なります。

酸素供給資材は排水の代わりにはならない

酸素供給資材を使用しても、圃場内に水がたまり続けていれば、湿害の原因となる過湿状態は解消されません。

湿害が発生したときは、まず排水し、種子や根、地際部の状態を確認します。そのうえで、病害や再播種の判断を行い、必要な場合に補助資材を検討します。

酸素供給資材は、明渠、暗渠、心土破砕、畝立て播種などを置き換えるものではありません。排水経路を確保したうえで、根域環境の回復を補助する方法の一つとして位置づけます。

「酸素爆誕」の特徴と使用時の注意点

「酸素爆誕」は、1液と2液を混合して使用する液体タイプの酸素供給資材です。

製品資料では、混合した2液が土壌内で反応を続け、酸素を発生させる資材として紹介されています。液剤のため、灌水設備や動力噴霧器などを使い、栽培途中でも施用できる点が特徴です。

湿害を受けた大豆圃場で使用する場合も、先に排水口や明渠を確認し、圃場内の滞水を解消します。

使用時は、次の点に注意します。

  • 1液と2液を必ずセットで使用する
  • 1液と2液の原液混用は避ける
  • 製品ラベルに記載された希釈倍率と使用量を守る
  • 混合後は速やかに施用し、当日中に使い切る
  • 他の肥料や農薬との混用可否を確認する
  • 散布時は保護具を着用する
  • 目や皮膚への付着を避ける
  • 作物、栽培方法、圃場条件に適した使用方法を販売元へ確認する

製品資料では、1液と2液をそれぞれ500倍以上に希釈して混合し、混合液を速やかに施用するよう案内されています。銅剤を除く一般的な液肥などとの混用は可能とされていますが、実際の使用時は最新の製品ラベルと販売元の案内を確認してください。

以下から商品の詳しい説明をご覧いただけます。

まとめ|大豆の湿害対策は、まず水の出口を確保する

大豆の湿害は、圃場に余分な水がたまり、種子や根の周囲が過湿になることで発生します。根圏の酸素不足に加え、播種から出芽までの障害には、急激な吸水による損傷や土壌病原菌の感染も関係します。

湿害が発生したときは、次の順番で対応します。

  1. 排水口と明渠を確認する
  2. 圃場内の水を排出する
  3. 被害場所と出芽状況を記録する
  4. 種子、根、地際部の状態を確認する
  5. 病害の可能性を切り分ける
  6. 再播種や経過観察を判断する
  7. 必要に応じて補助資材を検討する

毎年湿害を繰り返す圃場では、排水口や明渠だけでなく、排水路の水位、周辺からの浸入水、暗渠の機能、耕盤層の状態も確認します。地下水位が高い圃場では暗渠排水、すき床が水を止めている圃場では心土破砕など、圃場条件に合った方法を選びます。

葉の黄化だけで肥料不足と決めず、まず水がどこで止まり、どこから流れ込んでいるかを確かめましょう。

大豆の湿害対策は、圃場内の水を速やかに外へ出せる状態をつくることから始まります。

監修者

人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。

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