
ケイ酸肥料は、ケイ素(シリカ)を主成分とする肥料の総称で、作物の生育や土壌の改良に寄与する存在として注目されています。
土壌中のケイ素含有量は地域によって異なり、不足している場合には作物の根張りが弱くなったり、茎葉が倒れやすくなったりすることがあるため、見過ごせない要素です。
特にイネ科作物(稲、麦など)はケイ素を多く吸収するため、ケイ酸肥料の施用による効果が顕著に現れるケースが多いです。さらに、病害虫への抵抗性や収量向上にも貢献することが期待され、多くの農家や研究者が活用と研究を進めています。
本記事では、ケイ酸肥料の特徴から種類、施用方法、そして選び方のポイントまでを詳しく解説し、農業においてどのように活かせるのかを探っていきます。
ケイ酸肥料の基本情報と効果

ケイ酸肥料は、土壌中のケイ素を補給することで作物の細胞組織を強化し、倒伏(とうふく)や病害虫被害を軽減する効果が期待できる資材です。
ケイ素は植物の細胞壁に取り込まれて強度を高めるほか、茎や葉の表面を硬くして外敵の侵入を防ぐ役割も担います。その結果、台風などの気象災害に対しても作物が倒れにくくなり、また虫害や病気からのダメージを最小限に抑えられるのが大きな利点です。
加えて、光合成の効率が向上することで品質や収量アップにつながることも報告されています。ただし、土壌に十分なケイ素が含まれている地域もあるため、施用前には土壌診断を行い、過剰施用にならないよう留意することが大切です。
ケイ酸肥料の特徴・メリット
ケイ酸肥料の最大の特徴は、作物の「強靭化」に大きく寄与する点です。
具体的には、稲作でケイ酸肥料を使用すると茎が太くなり倒伏しにくくなるだけでなく、葉の表面が硬化して病害虫の侵入を抑制する効果もあります。
また、作物自身が健康に育つことで農薬の使用量を減らせる可能性があり、環境保全やコスト削減につながるのもメリットの一つです。
さらに、ケイ酸はアルカリ性を示す場合が多いため、酸性土壌の中和効果が期待できる資材も存在します。こうした多面的な効果により、ケイ酸肥料は近年、稲作だけでなく野菜や果樹など多様な作物でも注目されるようになっています。
主なケイ酸肥料の種類
代表的なケイ酸肥料として、珪酸塩(ケイカル)系肥料や高炉スラグ由来のスラグ系肥料が挙げられます。
ケイカル系は水に溶けにくい特徴がある一方、少しずつ土壌にケイ素を供給するため、長期的な効果が期待できます。
一方、高炉スラグ系の肥料は製鉄所の副産物として生成されるスラグを原料とし、ケイ酸以外にもカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を含むことが多いです。
また、農業資材としては、火山灰や珪藻土などを利用したケイ酸含有資材も存在し、それぞれの地域や作物特性に合わせて選択できる柔軟性があります。
ケイ酸肥料が与える作物への効果
ケイ酸肥料を施用すると、まず根の生育が促進され、作物の吸収力が高まるという利点があります。
根がしっかり張ることで養水分を効率的に取り込めるため、干ばつ時や高温期でも生育不良を起こしにくくなります。さらに、茎や葉の組織が強化されることで、倒伏や病害虫被害への抵抗力が上がり、収量や品質にも好影響をもたらします。
とりわけ、イネ科作物(稲、麦、トウモロコシなど)での効果が著しいとされ、適切な施用量とタイミングを守れば、農業収益の安定化に貢献する資材として期待が高まっています。
ケイ酸肥料の使い方と注意点

ケイ酸肥料の効果を最大限に引き出すためには、作物や土壌の状態に合わせた適切な施用が重要です。
一般的には元肥として土壌に混ぜ込んだり、追肥として生育の要所で施用したりする方法があります。
しかし、ケイ素は一度に大量に吸収されるわけではないため、過剰施用を行っても作物の成長が急に加速するわけではありません。
むしろ土壌のpHを上昇させてしまうリスクや、他の肥料成分とのバランスを崩す可能性がある点に注意が必要です。
特に酸性土壌が改善されすぎてアルカリ性に偏ると、微量要素の吸収障害が起きることもあるため、施用前には土壌分析と適量の確認を欠かさず行いましょう。
適切な施用量とタイミング
作物の種類や土壌状態に合わせて、ケイ酸肥料の施用量やタイミングを考慮することが大切です。たとえば、稲作では苗が活発に生育する分けつ期から登熟期にかけて少量ずつ追肥として与えると、倒伏の防止や収量の向上に効果が出やすいと言われています。
一方、連作障害を避けたい場合には、元肥として圃場全体に均一に散布し、しっかり耕うんして土と混ぜ込む方法も有効です。いずれの場合も、事前に土壌診断を行い、ケイ素の不足レベルを把握することで、無駄なく効率的にケイ酸肥料を活用できます。
他の肥料・土壌改良材との併用
ケイ酸肥料を使う際は、窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)などの主要肥料や、有機質資材、石灰資材などとのバランスを考慮する必要があります。
ケイ酸肥料が土壌をアルカリ性に寄せやすい性質を持つ場合、すでにpHが高い圃場では施用量を減らす、もしくは他の酸性系肥料と組み合わせるといった工夫が求められます。
また、有機物を多く含む土壌では、微生物の活動が活発になるため、ケイ素の溶出や作物の吸収もスムーズに進む傾向があります。複数の資材を組み合わせて使うことで、土壌改良と作物の品質・収量アップを同時に実現できる可能性が広がります。
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倒伏後の対応策|収穫までにできること

稲が倒伏してしまっても、すぐに諦める必要はありません。適切な対応を取れば、品質の低下を最小限に抑えながら収穫まで持ちこたえることが可能です。
収穫を急がず、登熟を見守る
倒伏した稲を見ると、すぐに収穫したくなるかもしれませんが、まずは登熟状況を冷静に見極めることが重要です。
倒伏によって茎が折れていない限り、稲は地面に寝た状態でも光合成を行い、登熟を進めます。収穫適期よりも早く刈り取ってしまうと、未熟米の混入や品質低下につながるため注意が必要です。
特に倒伏直後は株元がまだ湿っていることが多く、乾くまで数日かかる場合もあります。まずは水はけを改善し、しばらく天候を見守りながら登熟の進行を確認しましょう。
倒伏後に検討すべきケイ酸補給
倒伏した稲を再び健全な状態に戻すためには、ケイ酸の補給が非常に有効です。ケイ酸は稲の細胞壁を強化し、茎を太くしなやかに保つ働きがあり、倒伏後の回復にも役立ちます。
特に登熟期に入り、茎葉の再生力が求められる場面では、吸収効率の高い液体ケイ酸資材の活用がおすすめです。
一般的にはケイカルや珪酸苦土石灰などの粉状資材が使われますが、即効性を求めるなら、液体タイプの「セルマックス」などの高吸収ケイ酸資材を散布することで、回復を早めることが可能です。
収穫作業の工夫で品質低下を防ぐ
倒伏した稲は、刈り取り時に脱粒や品質劣化のリスクが高まります。そのため、収穫作業にはいくつかの工夫が必要です。
まず、バインダーやコンバインの刈り取り高さや速度を調整し、倒れた稲を無理に引き起こさずに刈り取る設定にすることが大切です。また、倒伏方向に合わせて作業を行うことで、無駄な負荷をかけずスムーズに収穫が進みます。
事前に試し刈りをして機械の設定を調整することで、被害を最小限に抑えられます。さらに、倒伏によって水に浸かってしまった稲にはカビのリスクもあるため、乾燥工程にも注意を払いましょう。
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高温障害対策としてのケイ酸補給

近年の猛暑やフェーン現象などにより、稲作における高温障害のリスクが高まっています。特に登熟期の高温は、白未熟粒の増加や登熟不良を引き起こし、品質低下や収量減少の原因となります。
こうした高温ストレスへの耐性を高める手段として、ケイ酸の補給が注目されています。ケイ酸には、細胞膜や葉緑体の構造を安定させる働きがあり、高温による細胞の損傷を防ぐ効果が期待できます。
とくにおすすめなのが、液体タイプのケイ酸資材「セルマックス」です。セルマックスはマイクロカプセル化によって吸収効率が非常に高く、葉や茎の健全な状態を保ちつつ、ストレス耐性の向上にも寄与します。水口からの流し込みやドローンによる散布も可能なため、高温障害が予測される時期の事前対策や早期対応にも効果的です。
登熟期における品質維持や収量確保のためには、高温障害に備えたケイ酸の戦略的な施用が不可欠です。
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ケイ酸肥料を選ぶ際のポイント
ケイ酸肥料にはさまざまな種類があるため、作物の種類や栽培目的、土壌の性質に適した製品を選ぶことが重要です。
成分表示をチェックし、純度や含有する他の成分(カルシウム、マグネシウム、微量要素など)を把握することで、過不足なく施用できるようになります。
また、価格だけでなく、施用のしやすさや持続効果の長さなども考慮し、農業の現場に合った製品を選ぶとよいでしょう。最近では土壌分析サービスや作物別の設計書を提供するメーカーも増えており、専門家のアドバイスを得ることで失敗を減らせます。
成分表示とブランドの確認
ケイ酸肥料を選ぶ際には、袋や製品カタログに記載されている成分表示をよく読むことが第一歩です。ケイ素以外のカルシウムや苦土(マグネシウム)、リン酸などの含有量や溶解度も確認し、土壌に必要な要素がしっかり補えるかをチェックしましょう。
ブランドやメーカーによって原材料や製造工程が異なるため、同じ「ケイ酸肥料」の分類でも効果や溶出スピードに差があります。また、過去の利用者の口コミや販売店の評価を参照することで、自身の栽培スタイルに適した製品かどうかを判断しやすくなります。
土壌診断と作付け計画
ケイ酸肥料の効果を最大限活かすには、施用前に土壌診断を行い、地力やpHバランスを正確に把握することが不可欠です。
土壌中のケイ素がどの程度欠乏しているかによって、必要な施用量は大きく変わります。また、作付けする作物がイネ科なのか、根菜類や葉物野菜なのかによっても、適切な施用タイミングや製品の選択基準は異なります。
計画的に土壌分析を行い、複数年単位での作付けスケジュールを考えることで、ケイ酸肥料だけでなく他の肥料や改良材の施用も無駄なく行えるようになります。
高吸収型ケイ酸資材「セルマックス」とは?

稲作現場では、「ケイ酸が効きにくい」「土壌条件によって反応が遅い」といった課題を抱えるケースも少なくありません。そんな中、注目されているのが液体タイプの高吸収型ケイ酸資材「セルマックス」です。
セルマックスは、ケイ酸とカルシウムを独自のマイクロカプセル技術で包み込み、圃場に投入後すぐに作物が吸収しやすい形に設計されています。これにより、一般的なケイカルや珪酸苦土石灰に比べて、速効性と安定性の両立を実現しています。
また、セルマックスは以下のような特長があります:
- 水口からの流し込みや葉面散布、ドローン施用にも対応
- 1反あたり804円〜の低コスト運用が可能
- ケイ酸だけでなくカルシウムも補給でき、根・茎・葉の総合強化が可能
倒伏リスクが高い年や、高温障害が懸念される気象条件の中で、短期間でしっかり効果を出したいときの選択肢として最適な資材です。
圃場の状況や栽培ステージに応じた施用タイミングについては、専門家のアドバイスを受けながら、計画的に導入するのが理想的です。
まとめ
ケイ酸肥料は、作物に欠かせないケイ素を補給し、倒伏防止や病害虫への抵抗力強化、収量と品質の向上など、多くのメリットをもたらす貴重な資材です。イネ科作物だけでなく、さまざまな作物で効果が期待される一方、過剰施用や土壌pHの偏りには注意が必要です。そこで、以下のステップをぜひ実践してみてください。
- 土壌診断を行う
まずは土壌分析を実施し、pHやケイ素の含有量、他の栄養素とのバランスを把握しましょう。分析結果に基づいて不足分を補うことで、無駄のない施用が可能になります。 - 適切な肥料製品を選択する
ケイ酸肥料にも、ケイカル系・スラグ系・火山灰由来など多彩なタイプがあります。成分表示や溶出スピード、含まれるミネラル成分を比較検討し、育てたい作物に合った製品を選びましょう。メーカーやブランドの評判、利用者の口コミも判断材料にすると効果的です。 - 施用タイミングと施用量を守る
分けつ期や登熟期など、作物の生育段階に合わせて少量ずつ追肥する方法もあれば、元肥として圃場全体に混ぜ込む方法もあります。作物や土壌状態に応じて最適な施用方法を考え、過剰施用を避けるようにしましょう。 - 専門家のアドバイスやサービスを活用する
土壌分析や栽培設計のサポートを提供する業者・メーカーのサービスを積極的に活用し、疑問点やリスクを事前に解消してください。特に初めてケイ酸肥料を使う場合は、プロの意見を取り入れることで失敗を大幅に減らすことができます。 - 複数年スパンで作付け計画を立てる
ケイ酸肥料の効果は中長期的に現れることも多いです。連作障害を回避するためにも、複数年単位で土壌管理や作付けを計画し、ほかの肥料や土壌改良材との併用を検討してみましょう。
これらの手順を踏むことで、ケイ酸肥料のポテンシャルを最大限に引き出し、健康な作物の育成とコストパフォーマンスの向上を同時に実現できます。
ぜひ土壌診断や製品選び、施用タイミングなどの行動を具体的に行い、ケイ酸肥料をうまく活用してください。そうすることで、持続可能な農業の一歩を踏み出し、作物の生産性と品質のさらなる向上を目指すことができるでしょう。
監修者
人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。
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