
玉ねぎの肥料を考えるとき、「どの肥料を、いつ、どのくらい与えればよいのか」は気になるポイントです。
ただし、玉ねぎは地域や作型、品種によって生育の進み方が異なります。たとえば、北海道では春まき、本州・四国・九州などでは秋まきが中心で、施肥体系にも違いがあります。北海道の春まきでは全量基肥を基本とする体系がある一方、本州の秋まきでは基肥と複数回の追肥に分ける体系が一般的です。
そのため、「玉ねぎには○月にこの肥料を与えればよい」と全国一律に考えるのではなく、作型や品種、生育段階、土壌の状態を確認しながら施肥を調整することが大切です。
また、「玉ねぎが大きくならない」「葉が黄色い」といった症状が出た場合も、単純な肥料不足とは限りません。根の状態や水分、排水性、肥料の過不足など、複数の要因を切り分けて考える必要があります。
この記事では、玉ねぎの肥料・追肥について、元肥や止め肥、土づくり、生育段階ごとの栄養管理まで、生産者が施肥を考えるうえで押さえておきたいポイントを整理します。
玉ねぎの肥料・施肥を考える基本
玉ねぎの肥料は、成分だけでなく作型や品種、生育段階によって考え方が変わります。まずは施肥の前提となるポイントと、窒素・リン酸・カリの役割を確認しましょう。
施肥は作型・品種・生育段階によって変わる
玉ねぎの施肥を考えるうえで、まず確認したいのが「どの作型・品種を、どの生育段階で管理しているか」です。
玉ねぎの球が肥大を始める時期は、日長と温度の影響を受けます。また、品種の早晩性によって肥大開始に必要な条件も異なります。つまり、肥料を多く与えれば任意のタイミングで球を肥大させられるわけではありません。
秋まき中晩生種の一例では、冬の間は地上部の生育がほとんど進まず、気温が上がる春先から根数や葉数が増え、その後に球肥大へ移っていきます。
そのため、施肥を考えるときは、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 春まきか秋まきか
- 早生・中生・中晩生など、どの品種か
- 現在どの生育段階にあるか
- 土壌にどの程度養分が残っているか
- 葉や根が十分に生育しているか
地域の施肥基準がある場合は、それを基本にしつつ、土壌診断や圃場の生育状況を踏まえて調整します。
窒素・リン酸・カリの役割と過不足を理解する
玉ねぎでも、窒素・リン酸・カリは主要な肥料成分です。
ただし、それぞれを多く与えればよいわけではありません。重要なのは、不足を避けながら、生育段階や土壌中の養分量に合わせてバランスを取ることです。
| 成分 | 玉ねぎで確認したいポイント |
| 窒素 | 茎葉の生育を支える一方、肥大期まで強く効きすぎないよう注意する |
| リン酸 | 初期生育や活着との関係を考え、土壌診断結果を踏まえて施用する |
| カリ | 主要養分の一つとして、窒素・リン酸と合わせて土壌診断をもとに施肥量を考える |
特に窒素は、不足すると十分な生育を確保しにくくなりますが、遅い時期まで肥効が強く残ることにも注意が必要です。
秋まき中晩生種の資料では、肥大開始期に窒素の肥効が高いと肥大開始が遅れ、さらに遅い追肥は軟弱生育や貯蔵中の腐敗につながる可能性が示されています。
一方、リン酸やカリについても、「玉ねぎに必要だから多めに入れておけばよい」とは限りません。春まきタマネギの試験でも、リン酸・カリの施肥量は土壌診断に基づいて設定されています。
肥料を選ぶときは、「玉ねぎ用」と書かれた商品を選ぶだけでなく、圃場に何が不足しているのか、現在の生育段階で何を補いたいのかを考えることが大切です。
玉ねぎの元肥と追肥|時期・回数・止め肥の考え方

玉ねぎの元肥・追肥は、時期や回数だけを覚えるのではなく、それぞれの施肥で何を支えるのかを理解することが大切です。ここでは、元肥から止め肥までの考え方と、追肥に使う肥料の選び方を整理します。
元肥は土壌の状態と作型を見て決める
元肥は、定植後から初期生育を支える基本となる施肥です。
ただし、元肥の量や成分は、圃場の肥沃度や前作、堆肥などの有機物施用、作型によって変わります。
たとえば同じ秋まき栽培でも、露地とマルチ栽培では肥料の流亡条件が異なります。秋まき普通栽培の資料では、マルチ栽培では肥料の流亡が少ないことを踏まえ、露地とは異なる施肥体系が示されています。
そのため、「玉ねぎの元肥は10a当たり○kg」と全国一律の数字だけで決めるのではなく、
- 地域の施肥基準
- 土壌診断結果
- 前作の施肥内容
- 堆肥などの有機物施用
- 作型や栽培方法
を確認したうえで調整することが重要です。
前作で多くの肥料を使用していた圃場や、長年同じ成分を施用してきた圃場では、残肥も考慮しましょう。
追肥は「いつ」だけでなく目的から考える
玉ねぎの追肥では、「何月に追肥するか」だけでなく、その追肥でどの生育を支えたいのかを考える必要があります。
秋まき中生・中晩生種の一例では、冬から春にかけて追肥を行い、3月中下旬の追肥を最後の「止め肥」としています。
資料では、1~2月の追肥は抽だいを防ぎながら春の生育につなげ、3月の追肥は春以降の旺盛な生育を支えるという、それぞれ異なる目的が示されています。
一方、北海道の春まきタマネギでは全量基肥を基本とする体系があります。また、多雨による基肥窒素の溶脱などに対応するため、途中で窒素を分けて施用する技術も検討されています。
つまり、「玉ねぎは追肥を3回行う」といった情報だけを、自分の圃場へそのまま当てはめることはできません。
作型や品種、生育の進み方を確認したうえで、地域の施肥体系を基本に判断しましょう。
最後の追肥「止め肥」と遅い窒素施肥に注意する
止め肥とは、その作型で最後に行う追肥のことです。
秋まき中晩生種の一例では、肥大開始前の3月中下旬を止め肥としています。
これは、肥大が始まる時期までに必要な茎葉生育を確保し、その後は球の充実へ移行させるためです。肥大開始期に窒素が強く効いていると、球肥大の開始が遅れる場合があります。
遅い窒素施肥は、収穫時の生育だけでなく、貯蔵性まで含めて考える必要があります。
施肥量が多い場合には、倒伏期の遅れや土壌ECの上昇、貯蔵中の萌芽・腐敗との関連も指摘されています。
そのため、葉色が薄いからといって生育後半にすぐ追肥を追加するのではなく、根の状態や土壌水分、これまでの施肥履歴、肥大開始時期なども確認しましょう。
追肥に使う肥料は肥効と生育状況から選ぶ
追肥には化成肥料のほか、有機質肥料や液肥など、さまざまな選択肢があります。栽培体系によっては、肥効調節型肥料を利用して追肥作業を減らす方法もあります。
ただし、「鶏糞がよい」「液肥がよい」と肥料の種類だけで判断するのではなく、次のような点を確認します。
- どの成分を補給したいか
- どの程度の速さで効かせたいか
- 元肥ですでにどの程度施用しているか
- 土壌中に養分が残っていないか
- 現在の生育が不足気味か、過繁茂気味か
追肥だけを切り離さず、元肥から追肥までの総施肥量として考えることが大切です。
生育段階で変わる玉ねぎの栄養管理

玉ねぎでは、生育段階によって施肥の目的も変わります。
| 生育段階 | 主な管理のポイント |
| 育苗 | 定植後の活着につながる健全な苗と根を確保する |
| 定植・活着 | 根を傷めず、圃場へ速やかに活着させる |
| 越冬・茎葉生育 | 春の生育に向けて葉・根を確保する |
| 球肥大開始 | 品種ごとの日長・温度条件を踏まえ、十分な株をつくっておく |
| 球肥大・成熟 | 葉を健全に維持し、過剰な窒素や水分条件の悪化に注意する |
特に重要なのが、球肥大が始まるまでの生育です。
秋まき中晩生種の一例では、肥大開始期の株の大きさや葉数と球の大きさに関係があり、肥大開始までに9~10枚程度の葉と十分な株を確保することが重要とされています。これは全国すべての品種にそのまま当てはまる基準ではありませんが、「肥大期になってから肥料で一気に大きくする」のではなく、それ以前の生育を整える重要性を示しています。
根も重要です。
秋まき栽培の試験では、苗の根を切り取ると欠株が増え、りん茎重も軽くなっています。肥料が土壌にあっても、根が十分に働けなければ養分を利用しにくくなります。
肥料管理では地上部の葉色だけを見るのではなく、活着や根張り、水分状態まで含めて生育を確認しましょう。
玉ねぎの土づくり|pH・排水・土壌診断から施肥を考える

玉ねぎの生育を安定させるには、肥料だけでなく、根が養分を吸収しやすい土壌環境を整えることも重要です。ここでは、pH・排水性・石灰や堆肥の使い方、土壌診断の活用について見ていきます。
pHだけでなく排水性や根域環境も確認する
玉ねぎの土づくりでは、pHだけを合わせればよいわけではありません。
pHは地域の栽培基準や土壌診断を参考に調整しながら、排水性や土壌水分にも注意する必要があります。
排水不良の圃場では、高うねや明渠・暗渠などを利用し、水を抜きやすい環境を整えます。秋まき普通栽培の資料でも、排水の悪い圃場では排水対策を行い、うねの高さも圃場の排水性に合わせて変える管理が示されています。
また、土壌水分や地下水位は、生育中だけでなく収穫後の貯蔵性にも関係します。特に球肥大期以降の過湿には注意が必要です。
石灰・堆肥などの資材は土壌条件を見て使う
石灰や堆肥は、玉ねぎの土づくりで利用されることの多い資材です。
ただし、「玉ねぎだから毎年同じ量を入れる」のではなく、土壌診断や過去の施用履歴を踏まえて使用します。
堆肥には肥料成分を含むものもあるため、化学肥料だけで施肥量を計算すると、実際には窒素やリン酸などの投入量が想定以上になる場合があります。有機物由来の養分も含めて施肥設計を考えましょう。
石灰資材も同様です。現在の土壌pHを確認せずに繰り返し施用するのではなく、必要性を確認してから投入します。
土壌診断で残肥やリン酸蓄積を確認する
玉ねぎの施肥を見直すときは、土壌診断を活用すると判断しやすくなります。
実際の春まきタマネギの施肥試験でも、リン酸やカリの施肥量を土壌診断に基づいて設定したうえで、窒素の施肥方法が検討されています。
地域の診断体系によって項目は異なりますが、施肥を考える際には、
- pH
- EC
- 土壌中の養分
- 前作の施肥内容
- 堆肥などの有機物施用履歴
などを確認します。
すでに十分ある成分をさらに追加するのではなく、必要な成分を必要な時期に補うことが、過剰施肥を防ぐうえでも重要です。
玉ねぎが大きくならない・生育がおかしいときの確認ポイント
玉ねぎが大きくならない、葉が黄色い、とう立ちするなどの症状が出ても、原因が肥料不足とは限りません。症状ごとに考えられる要因を整理し、まず何を確認すべきかを見ていきましょう。
玉ねぎが大きくならない場合
玉ねぎが大きくならないと、「肥料が足りないのでは」と考えがちです。
しかし、球肥大を左右する条件は肥料だけではありません。
まずは次の順番で確認してみましょう。
- 品種・作型と肥大開始時期が合っているか
- 肥大開始までに十分な葉数・株が確保できているか
- 定植後の活着や根張りに問題がないか
- 乾燥・過湿になっていないか
- 肥料の不足または過剰がないか
玉ねぎの肥大開始は、日長・温度と品種によって左右されます。
また、秋まき中晩生種では、肥大開始までの葉数や株の大きさが球の大きさと関係します。
そのため、生育が進まない原因を確認しないまま追肥だけを増やしても、問題が解決しない場合があります。
とう立ちは肥料だけでなく苗・低温・生育条件も確認する
とう立ち(抽だい)は、玉ねぎが花芽をつけて花茎を伸ばす現象です。
秋まき栽培では、苗の大きさや定植時期、冬季の低温、生育状態などが関係します。
資料では、大きな苗を早く植え、暖冬で生育が進みすぎた場合に抽だいリスクが高まることが示されています。一方、窒素が切れて小さくなった株でも抽だいが発生する場合があり、単純に「肥料が多い・少ない」だけでは説明できません。
とう立ちが多い場合は、施肥だけでなく、
- 苗質
- 播種・定植時期
- 品種
- 越冬中の生育
まで含めて振り返りましょう。
葉が黄色い・葉先が枯れる場合は肥料不足だけで判断しない
葉色が薄い、黄色くなる、葉先が枯れるといった症状は、肥料不足のサインになる場合があります。
ただし、似たような症状は、
- 根傷み
- 乾燥
- 過湿
- 土壌条件
- 病害
などでも起こります。
まず圃場の水分状態や根の状態を確認し、これまでの元肥・追肥履歴、土壌診断、生育段階と合わせて判断しましょう。
「葉が黄色いから窒素を追加する」と即断すると、すでに肥料が十分ある圃場では過剰施肥につながる可能性があります。
長雨・根腐れが疑われる場合は排水と根域を確認する
長雨の後に生育が悪化した場合は、肥料不足を疑う前に排水状態を確認します。
多雨条件では、排水不良による湿害だけでなく、基肥窒素が溶脱して生育後半に不足する可能性もあります。北海道の春まきタマネギでも、多雨による排水不良と基肥窒素の溶脱が別々の課題として整理されています。
そのため、
長雨 → 生育不良 → すぐ追肥
ではなく、
長雨 → 排水・根の状態を確認 → 養分状態を確認 → 必要に応じて施肥を判断
という順番で考えることが大切です。
病害が疑われる場合は、肥料や土壌改良資材だけで解決しようとせず、症状を確認したうえで適切な防除判断を行いましょう。
玉ねぎの施肥を見直すときのチェックポイント
玉ねぎの施肥で迷ったときは、「どの肥料を追加するか」から考えるのではなく、圃場と生育を順番に確認すると原因を整理しやすくなります。
- 作型・品種・肥大開始時期
春まき・秋まき、品種の早晩性によって施肥体系や肥大時期は変わります。 - 地域の施肥基準
まずは地域の標準的な施肥体系を確認します。 - 土壌診断結果・前作・残肥
土壌中にすでに十分な養分が残っていないか確認します。 - 現在の葉数・葉色・根張り
肥料不足だけでなく、活着や根傷みも確認します。 - 水分・排水・根域環境
乾燥や過湿では、肥料があっても十分に利用できない場合があります。 - 元肥・追肥の履歴
いつ、何を、どの程度施用したかを整理します。 - 追加施肥・減肥の必要性
足りない成分を補うだけでなく、過剰な成分を減らす視点も持ちます。 - 収量だけでなく品質・貯蔵性への影響
生育後半まで肥料を効かせすぎると、倒伏や成熟が遅れ、貯蔵性に影響する可能性があります。
「追肥の時期だから」「葉色が薄いから」という一つの情報だけで判断せず、作型・土壌・生育・根域・これまでの施肥を順番に確認することが、適切な施肥につながります。
まとめ|玉ねぎの肥料は生育と圃場の状態を見て調整しよう
玉ねぎの肥料・追肥では、「何をいつ与えるか」だけでなく、作型・品種・生育段階・土壌・根・水分・これまでの施肥履歴を合わせて判断することが重要です。
元肥や追肥で必要な養分を確保する一方、生育後半まで窒素を効かせすぎることや、土壌中に十分ある成分をさらに追加することは避ける必要があります。
また、玉ねぎが大きくならない、葉が黄色いといった場合も、すぐに肥料不足と判断するのではなく、品種や肥大開始時期、葉数、根張り、排水性などから原因を切り分けてみましょう。
施肥量や肥料の種類に迷った場合は、地域の施肥基準や土壌診断を基本に、現在の生育状況とこれまでの施肥内容を確認しながら見直すことが大切です。
監修者
人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。









