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カリウムを含む肥料の種類と効果・使い方を徹底解説

作物を健やかに育て、収量と品質を高めるためには、三大栄養素である窒素・リン酸・カリウムのバランスが欠かせません。特にカリウムは、根や果実の成長促進、病害への抵抗力向上など、作物の体調を整える「調整役」として重要な働きをします。

本記事では、カリウムを多く含む代表的な肥料の種類から、作物への影響、施肥の注意点までを体系的に解説します。農業初心者から経験者まで役立つ情報を、わかりやすくまとめました。

カリウムを多く含む代表的な肥料の種類

草木灰|自然由来で即効性のある資材

草木灰は、木材や植物の燃焼灰から作られる自然由来の肥料で、特にカリウムが豊富に含まれています。即効性があり、カリウムが水に溶けやすい形で含まれているため、施用後すぐに作物に吸収されやすいのが特長です。石灰成分も含むため、酸性土壌の中和にも効果がありますが、pHが高くなりすぎないよう注意が必要です。葉菜類や根菜類の栽培でよく利用され、家庭菜園でも使いやすい肥料の一つです。

塩化カリ|広く使われる化成肥料の代表格

塩化カリ(KCl)は、最も一般的な化成カリウム肥料であり、広く流通しています。水に溶けやすく、即効性があり、畑作から水稲まで幅広く利用されています。ただし、塩分(塩素)を含むため、葉物野菜や塩害に弱い作物への連用は注意が必要です。施肥設計では、土壌の塩基バランスと作物の特性を考慮して使い分けると効果的です。

硫酸カリ|塩分を避けたい作物に向く

硫酸カリ(K₂SO₄)は、塩素を含まないため、塩分に弱い作物に適したカリウム肥料です。特にタバコやジャガイモ、果菜類などに利用されます。塩化カリよりも価格は高めですが、品質重視の栽培には有効です。硫黄も同時に供給できるため、硫黄欠乏の補完としても期待できます。追肥としても使いやすく、施用後の速効性も高いです。

鶏ふん・米ぬかなどの有機資材もカリを含む

鶏ふんや米ぬかなどの有機資材も、カリウムを含む肥料資源として活用されています。鶏ふんは窒素・リン・カリをバランスよく含み、緩やかに効くため土壌改良と肥効の持続性が期待できます。米ぬかも微生物活性を高めつつ、カリウムの供給源として機能します。化成肥料との併用で施肥設計の幅が広がりますが、有機資材は分解過程で土壌環境に影響を与えるため、過不足なく使うことが大切です。

カリウム含有量の見方と選び方のポイント

肥料を選ぶ際には、袋やラベルに記載された「N-P-K」の表示を確認しましょう。カリウム成分は「K2O(酸化カリウム)」で表示されており、含有量の目安になります。例えば「0-0-30」と表示されていれば、全成分のうち30%がカリウムです。施肥設計では、作物ごとのカリウム要求量、土壌の保持力(CEC)をふまえて、必要量を計算し、最適な施肥タイミングを見極めることが重要です。

カリウムが植物に与える主な働き

光合成を活性化し、収量・品質を向上

カリウムは、光合成に関与する酵素の活性化や、葉の気孔の開閉を調整することで、二酸化炭素の吸収をスムーズにします。その結果、光合成効率が向上し、作物の収量や品質の向上につながります。また、光合成産物である糖類を効率よく転流する働きもあり、根や果実に栄養を届ける重要な役割を担います。カリウムが不足すると、葉が黄色くなったり、光合成能力が低下することがあるため、早めの対策が必要です。

根・果実・種子の肥大や糖分移動を促進

カリウムは、植物内で生成されたショ糖やデンプンなどの光合成産物を、根や果実、種子などの「シンク器官」へと移動させる「転流」に関与しています。これにより、サツマイモやジャガイモなどの根菜類や果実の肥大を促進します。また、糖分の蓄積も助けるため、甘みのある作物づくりにも貢献します。収穫物の味や品質を高めるうえで、カリウムの適切な供給は非常に重要です。

病害虫や干ばつへの耐性を高める

カリウムは、植物の細胞内圧(膨圧)を調整することで、乾燥や高温などのストレスに対する抵抗力を高めます。また、病害虫に対する防御機能を助け、病気にかかりにくい丈夫な作物を育てる効果があります。これは、細胞壁の形成や栄養バランスの安定にも関係しており、健全な生育を維持するために欠かせない要素です。特に、気候変動が進む現在、環境ストレスへの対応力を高めるためにも、カリウムの管理は重要です。

「カリウムは根肥」という考え方の真偽

「カリウムは根肥(ねごえ)」と呼ばれることがありますが、これはカリウムが根の成長を直接的に促すというより、間接的に根の活性を維持する働きがあることから来ています。実際には、光合成で得たエネルギーを根に運ぶショ糖の転流や、細胞の膨圧維持によって根の伸長が促進されることが分かっています。ただし、マグネシウムやリン酸とのバランスが崩れると逆効果になることもあるため、「根肥」として使うには慎重な判断が求められます。

カリウム不足と過剰がもたらす影響

カリウム欠乏の典型的な症状と作物への影響

カリウムが不足すると、植物はさまざまな生理障害を起こします。典型的な症状として、葉の縁が黄色く変色したり、枯れ込んだりする「縁枯れ(えんがれ)」が見られます。また、光合成能力の低下や、糖の転流不良により、果実の肥大が不十分になったり、根の発達が弱くなることもあります。カリウム欠乏は見た目の症状が出るまでに時間がかかるため、事前の土壌診断や定期的な追肥が重要です。

過剰施用による病害促進や栄養バランスの乱れ

一方で、カリウムを過剰に施用すると、他の栄養素とのバランスが崩れ、かえって作物の生育を阻害することがあります。特にマグネシウムやカルシウムの吸収が妨げられ、葉の黄化や成長不良を引き起こすケースがあります。また、一部の研究では、カリウムの過剰施用が病害の発生を助長する例も報告されています。施肥設計は「多ければよい」ではなく、あくまで適量を守ることが基本です。

マグネシウムやカルシウムとの相互作用

カリウム、マグネシウム、カルシウムは土壌中で互いに影響を及ぼし合う陽イオンです。バランスが取れていれば植物の栄養吸収はスムーズですが、どれかが極端に多いと他の吸収が妨げられることがあります。特にカリウムが多すぎるとマグネシウム欠乏、逆にマグネシウムが過剰だとカリウム欠乏が起こりやすくなります。施肥の際は、三者のバランスにも目を向ける必要があります。

Mgが多すぎるとカリ吸収は阻害される

マグネシウムはカリウムと競合関係にあり、過剰に施用されるとカリウムの吸収が抑えられる傾向があります。特に土壌中のMg濃度が高い場合、植物はカリウムをうまく取り込めず、カリ欠乏症のような症状が現れることがあります。苦土石灰の多用などには注意が必要です。

カリが多すぎてもMg吸収は阻害されにくい

一方、カリウムの過剰がマグネシウムの吸収を著しく抑える例は少なく、ある程度の許容量があるとされています。これはカリウムが植物内で「ぜいたく吸収」される特性を持つためで、明確な生育障害が出にくい場合もあります。ただし、継続的な過剰施用は他の養分との不均衡を招きやすくなるため、注意が必要です。

カリウム肥料の適切な使い方

土壌診断による交換性カリの読み解き方

カリウムの施肥量を正確に決めるには、まず土壌中にどれだけの交換性カリが含まれているかを知ることが大切です。交換性カリとは、植物が吸収しやすい形で土壌中に存在するカリウムの量を指し、一般的に「mg/100g土壌」の単位で表されます。農業試験場や民間の土壌診断サービスで分析してもらえば、施肥設計に活用できます。目安として、交換性カリが8mg以上あれば多くの作物は正常に生育します。

カリウムの施肥量はN:Kバランスが鍵

カリウムは窒素とともに作物の成長に大きく関与します。適切な施肥には、窒素とカリウムの比率(N:K)を考慮することが重要です。一般的には、N:K2O=1:1〜1:1.5程度が目安とされており、作物の種類や栽培環境に応じて調整します。また、リン酸とのバランスも無視できません。施肥設計においては、単に成分量だけでなく、作物の生長段階や土壌の保持力も加味することが求められます。

施用時期と分施・追肥の考え方

カリウムは作物の生育後期まで必要とされるため、一度に全量を施すのではなく、基肥と追肥に分けて与える「分施」が効果的です。特に長期間栽培する果菜類やイネ科作物では、成長に合わせて段階的に追肥することで吸収効率が高まります。また、降雨による流亡のリスクを抑えるためにも、少量ずつ分けて施すのが理想的です。生育初期は控えめに、収穫期にかけて徐々に増やすのが基本です。

作物別のカリウム必要量の違いと注意点

作物によって必要とするカリウム量は大きく異なります。例えば、ジャガイモやスイカなどの根菜・果菜類は特にカリウムを多く必要とし、不足すると肥大や糖度に影響が出やすくなります。一方で、葉物野菜では窒素を多めに、カリウムは控えめにするケースもあります。施肥設計の際には、作物の特性や品種ごとの要求量を把握した上で、過不足なく与えることが収量・品質の安定につながります。

カリウム施用で注意すべき点

病害との関係|過剰でリスクが高まる例も

カリウムには病害に対する抵抗力を高める効果がありますが、施用量が多すぎるとかえって病気を誘発することもあります。たとえば、キャベツやブロッコリーでは、カリウムを標準量の2〜4倍施用した場合、べと病の発生率が高まるという研究報告もあります。これは養分のバランスが崩れ、植物の免疫機能が弱まることが一因と考えられます。施肥は適量を守ることが、病気を防ぐ第一歩です。

土壌中に残留するカリウムとその影響

カリウムは作物に吸収されないと土壌に残り続け、徐々に濃度が高くなる場合があります。特に連作や施肥過多の圃場では、土壌中のカリウムが蓄積し、他の栄養素の吸収を妨げることが懸念されます。マグネシウムやカルシウムの吸収障害の原因となることもあり、収量や品質の低下を招くことがあります。定期的な土壌分析を行い、残留成分の状況を把握しながら施肥計画を立てることが大切です。

他要素とのバランスを考慮した設計が重要

カリウム施肥の効果を最大限に引き出すためには、窒素・リン酸・マグネシウム・カルシウムなど他の要素とのバランスを常に意識する必要があります。とくに石灰(カルシウム)や苦土(マグネシウム)との比率は、植物の栄養吸収に大きな影響を及ぼします。「地力増進法」による目標比率(Ca:Mg:K=5:2:1など)を参考に、全体の施肥設計を組み立てましょう。偏った施肥は、植物の健全な生育を妨げる原因になります。

まとめ|カリウムの役割を正しく理解して安定収量へ

欠乏も過剰も避け、中庸を守ることが重要

カリウムは作物の生育に欠かせない栄養素ですが、不足すれば収量や品質が低下し、過剰になれば病害や栄養バランスの乱れを引き起こします。大切なのは、土壌や作物の状況に応じて適正な量を施すことです。過去の経験や慣習だけに頼らず、客観的なデータや土壌診断を基に、科学的に管理する姿勢が求められます。

作物・土壌に応じた柔軟な施肥設計を

作物ごとに必要とするカリウムの量やタイミングは異なります。また、土壌の性質や保肥力(CEC)によっても吸収効率は変化します。施肥設計を柔軟に調整することで、肥料の効果を最大限に引き出しつつ、無駄を省いた経済的な栽培が可能になります。現場の知恵と分析結果を組み合わせ、最適な管理を目指しましょう。

施肥設計は「三要素のバランス」から見直そう

窒素・リン酸・カリウムは、いずれも作物にとって必要不可欠な三大要素です。どれか一つに偏ることなく、バランスの取れた施肥設計を心がけることが、安定した収量と品質の確保につながります。特にカリウムは、目に見えにくい欠乏や過剰の影響が多いため、施肥の目的を明確にし、長期的な視点で計画的に管理することが重要です。

監修者

人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。

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