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ウンカ対策とは?見つけ方と対策を分かりやすく解説

稲作において最も厄介な害虫の一つ「ウンカ」。 毎年多くの農家が坪枯れによる収量低下や品質劣化に悩まされています。

「稲が円形に枯れてしまった」「株元に小さな虫がたくさんいる」「去年より明らかに収量が少ない」

このような経験はありませんか?

実は、ウンカは早期発見と適切な対策により被害を大幅に軽減できる害虫です。 しかし、種類の見分けがつかない、対策のタイミングが分からない、という声も多く聞かれます。

この記事では、農業研究機構の最新情報を基に、ウンカの症状の見分け方から効果的な防除方法までを分かりやすく解説します。 10分程度でお読みいただける内容で、明日からの稲作に即活用できる実践的な知識をお届けします。

ぜひ最後まで読んで、ウンカに負けない稲作を実現してください。

ウンカってどんな害虫?

ウンカの基本

ウンカは、稲の最も重要な害虫の一つで、体長5mm程度の小さなセミのような形をした昆虫です。 カメムシ目ヨコバイ亜目に属し、口吻(こうふん)と呼ばれる針状の口で稲の茎に刺し込んで師管液を吸い取って生きています。

日本の稲作に被害をもたらすウンカは主に3種類あり、「トビイロウンカ(秋ウンカ)」「セジロウンカ(夏ウンカ)」「ヒメトビウンカ」に分類されます。

これらのウンカは毎年梅雨時期にジェット気流に乗って中国南部やベトナム北部から飛来し、日本の水田で繁殖を繰り返します。

稲への被害はどれくらい?

ウンカは稲作において深刻な収量低下を引き起こします。 特にトビイロウンカが大発生すると「坪枯れ」と呼ばれる現象が起こり、田んぼの一部が円形状にまとまって枯死・倒伏してしまいます。

軽度の発生でも品質低下は避けられず、重度になると4割以上の収量減少も報告されています。 また、セジロウンカやヒメトビウンカは直接的な害に加えて、「イネ南方黒すじ萎縮病」や「イネ縞葉枯病」などのウイルス病を媒介するため、さらなる被害拡大の原因となります。

ウンカの見つけ方

3種類のウンカの特徴

トビイロウンカ(秋ウンカ)

Brown planthopper - Nilaparvata lugens
トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)の成虫 | 出典: Wikipedia

体長4~5mmで、名前の通り茶褐色をしています。 9月以降に多発し、坪枯れの主要原因となる最も危険なウンカです。 短翅型と長翅型があり、繁殖力が非常に高く、1ヶ月で世代交代を繰り返します。

Brown planthopper detailed view
トビイロウンカの詳細な形態 | 出典: Wikipedia

飛来時の密度は低いものの、3世代目となる秋頃には爆発的に数が増え、株元に群れて吸汁することで稲を枯死させます。

セジロウンカ(夏ウンカ)

White-backed planthopper - Sogatella furcifera
セジロウンカ(Sogatella furcifera)の成虫 | 出典: Wikipedia

体長3~4mmで、背中に白い筋があることが特徴です。 6月下旬から7月にかけて多発し、主にイネ南方黒すじ萎縮病を媒介します。

White-backed planthopper on rice leaf
稲の葉上のセジロウンカ | 出典: ResearchGate

坪枯れを起こすことは少ないですが、ウイルス病の感染により株が萎縮し、収量に影響を与えます。 第一世代が最も問題となるため、早期の対策が重要です

ヒメトビウンカ

体長2~3mmと最も小さく、黄褐色をしています。 他の2種と異なり、イネ以外の植物でも生存でき、日本で越冬が可能です。

イネ縞葉枯病を媒介し、特に保毒虫率(ウイルスを持っている虫の割合)が高い地域では警戒が必要です。

被害症状の見分け方

坪枯れ症状

Hopperburn symptom of rice plants
トビイロウンカによる坪枯れ(Hopperburn)症状 | 出典: ResearchGate

トビイロウンカによる最も特徴的な被害で、田んぼの一部が円形状に枯れて倒伏します。 最初は直径数メートルの円形から始まり、徐々に周囲に拡大していきます。 被害部分の稲は黄白色に変色し、最終的には枯死します。

Brown Planthopper damage on rice
トビイロウンカによる被害症状の詳細 | 出典: Plantix

株元での群生

Rice brown planthopper on rice stems
稲の株元に群生するトビイロウンカ | 出典: Lucid Central

ウンカは株元に群れる習性があるため、水田の株元を注意深く観察することで早期発見が可能です。 特にトビイロウンカは大量に群生するため、株をゆすったり虫見板で叩いたりすると多数の個体を確認できます。

ウイルス病症状

セジロウンカが媒介するイネ南方黒すじ萎縮病では、葉先がねじれ、株が萎縮し、葉脈が隆起します。 ヒメトビウンカが媒介するイネ縞葉枯病では、葉に黄白色の縞模様が現れ、株全体が萎縮します。

ウンカが出やすい条件

天気・気候

梅雨時期の飛来

ウンカは毎年梅雨時期(6月下旬~7月上旬)にジェット気流に乗って海外から飛来します。 この時期の気象条件により飛来数が大きく左右され、飛来が早期に始まったり複数回にわたったりすると大発生のリスクが高まります。

高温多湿な環境

気温27℃前後で湿度が高い環境はウンカの繁殖に最適です。 特に夜間の結露時間が長いと産卵が促進され、昼間の高温により発育が加速されます。

田んぼの環境

窒素肥料の多施用

窒素肥料の過剰施用は稲体内の可溶性窒素を増加させ、ウンカの栄養条件を良くします。 また、軟弱な稲は吸汁されやすく、ウンカの繁殖を助長してしまいます。

密植栽培

株間が狭い密植栽培では株元の通風が悪くなり、湿度が高く保たれます。 この環境はウンカの生息に適しており、発見も遅れがちになります。

水管理不良

深水管理や滞水は株元の湿度を高め、ウンカの生息環境を良くします。 また、冷水を使用している田んぼでは稲の抵抗力が弱くなり、被害を受けやすくなります。

ウンカの予防と対策

予防が大切

育苗箱施用剤の使用

Nursery boxes for rice cultivation
育苗箱を使用した稲の栽培準備 | 出典: ResearchGate

ウンカ対策で最も効果的なのが育苗箱施用剤の使用です。 苗の段階で薬剤を処理し、有効成分を稲に吸わせることで、移植後50~60日間の長期防除効果が得られます。

Efficient Nursery Preparation for Paddy Seedlings
育苗箱を使った効率的な苗準備 | 出典: Mahindra Farm Machinery

特に抵抗性ウンカ対策として、新規成分のピラキサルト(ゼクサロン)やピメトロジン(チェス)を含む箱剤が効果的です。

適切な品種選択

ウンカ抵抗性を持つ品種の選択は基本的な対策です。 地域の発生状況や栽培条件に応じて、適切な抵抗性品種を選択しましょう。

肥料管理の適正化

窒素肥料の適正施用により、稲の抵抗性を維持することが重要です。 特に分げつ期以降の窒素追肥は控えめにし、ケイ酸資材の施用により稲を硬くしてウンカの吸汁を困難にします。

薬での防除

育苗箱施用剤の選択

抵抗性ウンカに対応するため、以下の有効成分を含む薬剤を選択します:

新規成分系

  • ピラキサルト(トリフルメゾピリム):90日を超える長期残効
  • ピメトロジン:抵抗性ウンカに高い効果

従来成分系

  • フィプロニル:トビイロウンカに効果的
  • ジノテフラン:幅広いウンカ種に有効

本田防除

育苗箱施用剤の効果が切れた後や、大発生時には本田での薬剤散布が必要です。 抵抗性を考慮し、RACコードの異なる薬剤をローテーション使用することが重要です。

粒剤施用

  • 水面施用により株元まで有効成分が届く
  • 散布機器が不要で省力的

液剤散布

  • 速効性があり緊急時に有効
  • 株元まで確実に薬剤が届くよう十分量を散布

散布のタイミング

薬剤散布のタイミングは防除効果を左右します。

予防散布

  • 飛来が確認された時点で実施
  • 発生予察情報を参考に適期散布

治療散布

  • 発生初期に速やかに実施
  • 1株あたり20~30匹以上確認された場合は緊急散布

追加散布

  • 育苗箱施用剤の効果切れ後
  • 気象条件により追加リスクが高まった場合

時期別の対策

育苗期の対策

Rice seedling dip method for insecticide treatment
稲苗への薬剤浸漬処理方法 | 出典: ResearchGate

種子消毒と育苗箱施用剤の処理により、初期感染を防止します。 播種時・緑化期・移植直前のいずれかのタイミングで確実に処理を行います。

移植後の対策

補植用苗の管理に注意し、使用後は速やかに処分します。 飛来状況を注意深く観察し、必要に応じて本田防除を実施します。

分げつ期の対策

第一世代ウンカの発生状況を監視し、密度が高い場合は追加防除を検討します。 窒素追肥は控えめにし、稲の抵抗性を維持します。

出穂期の対策

第三世代ウンカの爆発的増加に備え、発生状況を定期的に調査します。 収穫まで2週間以上ある場合は薬剤防除、1週間程度の場合は早期収穫を検討します。

モニタリング方法

虫見板による調査

下敷き状の白い板を使い、株元をたたいて落下したウンカの数を調査します。 田んぼの5ヶ所程度で実施し、平均密度を算出します。

発生密度の判断基準

  • 1株あたり5匹以下:安全圏
  • 1株あたり10~20匹:注意レベル
  • 1株あたり20~30匹以上:危険レベル(緊急防除必要)

世代の見極め

飛来日から約30日後に第二世代、60日後に第三世代の幼虫が発生します。 特に第三世代の発生状況が坪枯れリスクを左右するため、重点的に監視します。

抵抗性ウンカ対策

抵抗性の現状

近年、ベトナム北部や中国南部での大量農薬使用により、抵抗性を獲得したウンカが飛来しています。

  • トビイロウンカ:ネオニコチノイド系に抵抗性
  • セジロウンカ:フェニルピラゾール系に抵抗性
  • ヒメトビウンカ:地域により抵抗性程度が異なる

対策の考え方

同一系統薬剤の連用を避け、作用機構の異なる薬剤をローテーション使用します。 RACコードを確認し、計画的な薬剤選択を行うことが重要です。

新規薬剤の活用

ピラキサルトやピメトロジンなど、抵抗性ウンカにも高い効果を示す新規成分の積極的活用が推奨されます。

よくある質問

いつ頃から注意すればいい?

ウンカは6月下旬から7月上旬の梅雨時期に飛来するため、この時期から注意が必要です。 育苗箱施用剤による予防的防除を基本とし、飛来状況に応じて追加対策を検討します。

薬はいつまくのがベスト?

育苗箱施用剤は移植直前が最も効果的です。 本田防除は発生初期の実施が原則で、1株あたり20匹以上確認された場合は緊急散布を行います。

無農薬でもできる対策は?

抵抗性品種の選択、適切な肥料管理、水管理の改善が基本です。 物理的防除として、廃油による窒息防除やブロワーによる吹き飛ばしも効果的です。

発生してしまった時の対処法は?

速やかな薬剤散布が基本ですが、収穫間近の場合は早期収穫を検討します。 坪枯れが発生した部分は翌年の伝染源となるため、収穫後は適切に処理します。

来年に向けてどんな準備をすればいい?

今年の発生状況を記録し、翌年の対策に活かします。 種子の更新、品種の見直し、薬剤ローテーションの計画を立てます。

まとめ

ウンカ対策のポイント

ウンカの効果的な防除には、予防を基本とした総合的な対策が重要です。 育苗箱施用剤による初期防除を基本とし、定期的なモニタリングにより発生状況を把握します。 抵抗性ウンカの増加に対応するため、新規薬剤の活用と系統の異なる薬剤のローテーション使用が不可欠です。

継続的な管理の必要性

ウンカは毎年海外から飛来する害虫のため、継続的な対策が必要です。 気候変動により発生パターンも変化する可能性があるため、最新の技術情報と発生動向に注意を払います。 地域の実情に応じた防除体系を確立し、記録の蓄積により自分の田んぼの特性を把握することが重要です。

専門機関への相談窓口

ウンカ対策で困った際は、各地の専門機関に相談することをお勧めします。 都道府県の農業試験場や普及センター、農協の営農指導員が主な相談窓口となります。 病害虫防除所が発表する発生予察情報を活用し、適切なタイミングでの防除を心がけましょう。

困った時は一人で悩まず、専門家の知識と経験を積極的に活用することが、ウンカに負けない稲作実現の鍵となります。

監修者

人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。

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