
農業に取り組むうえで、作物の生育や収量に大きな影響を与えるのが「肥料選び」です。
しかし一言で肥料といっても、有機質肥料・化学肥料・速効性・緩効性・液体肥料・固形肥料など、種類も特徴もさまざま。作物や土壌の状態、時期に応じて最適な肥料を選び、正しく使い分けることが、収量アップや高品質な作物づくりのカギとなります。
本記事では、農業初心者からベテラン農家さんまで役立つように、肥料の種類一覧とそれぞれの効果、原料別・成分別・タイミング別の使い分け方を徹底解説!
また、「元肥」「追肥」など施肥のコツ、さらに「堆肥との違い」や「失敗時のリカバリー方法」まで、現場ですぐに役立つ具体的な情報を網羅しています。
これを読めば、どんな作物にどの肥料をどう使えばいいかが一目でわかり、健全な作物育成と収量アップが目指せます!
農業に真剣に取り組むあなたに、ぜひ最後まで読んで実践していただきたい内容です。
肥料とは?植物にとって必要な理由
肥料の基本的な定義
肥料とは、作物が元気に育つために欠かせない栄養素を人工的に補う資材です。
自然界にも養分はありますが、農業ではそれだけでは不十分なため、肥料を計画的に施すことで、より良い収穫が可能になります。
例えば、米作りでは収量と品質を向上させるために、施肥設計が不可欠です。
肥料が植物に与える影響
適切な肥料は、作物の根の張りを良くし、茎葉の成長を助け、花や実を豊かにつける力を与えます。逆に不足すると、葉が黄変したり、花芽がつかなかったりする原因になります。
特に窒素不足は葉の黄ばみ、カリウム不足は病気への弱さとして現れるため、定期的な観察と施肥調整が重要です。
土作りに欠かせない資材とは?
作物の健全な成長には、肥料だけでなく土作りも欠かせません。
通気性、排水性、保水性を良好に保つためには、腐植酸資材や完熟堆肥の投入が有効です。
特に連作が続く畑では、微生物活性を高めることで、根張りを支え、肥料の効率も上がります。
肥料の成分「三大要素」とその他栄養素
肥料に欠かせない三大要素(窒素・リン酸・カリウム)
作物の生育には「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリウム(K)」の三要素が必須です。
- 窒素(N):葉や茎の成長を促進します(例:葉物野菜、稲)
- リン酸(P):花や実の形成を助けます(例:トマト、果樹)
- カリウム(K):病害虫への抵抗力を高め、茎を丈夫にします(例:ジャガイモ)
バランスよく施肥することで、根・葉・実が総合的に健全に育ちます。
様子を見て与えるその他の栄養素(カルシウム・マグネシウム・硫黄など)
三大要素だけでは不十分な場合、
- カルシウム(Ca):細胞を強くし、根腐れやトマトの尻腐れ予防
- マグネシウム(Mg):葉緑素の中心成分で、光合成を助ける
- 硫黄(S):たんぱく質合成に必要
などの中量要素、また亜鉛、鉄、マンガンなど微量要素も、必要に応じて補給することが重要です。
葉の色や生育の様子を見ながら、的確に判断しましょう。
肥料の種類一覧|原料・成分・効果・使い方・形状で分類
肥料は、原料・成分・効果・使い方・形状によって細かく分類されます。それぞれの特徴を理解して使い分けることで、収量アップ・品質向上に直結します。
原料や成分による肥料の分類
化学肥料(無機質肥料)
化学的に合成された成分で作られる肥料です。成分が純粋で即効性が高く、狙った効果を素早く発揮できます。
たとえば「硫安(硫酸アンモニウム)」は稲の葉色回復に、「過リン酸石灰」はトマトの着果促進に使われます。
ただし、使いすぎると塩害リスクがあるため注意が必要です。
有機質肥料(緩効性肥料)
油かす、魚粉、鶏ふん、堆肥など、自然由来の原料から作られる肥料です。緩やかに分解・吸収され、土壌改良効果も期待できます。
持続的に効くため、特に果樹や有機栽培では重宝されます。
効果による肥料の分類
速効性肥料
水にすぐ溶けて、速やかに作物に吸収されるタイプ。例えば葉物野菜に、液体肥料で追肥する場合に最適です。
急な生育不良時にも対応できますが、持続性は短いです。
緩効性肥料
じわじわ効果が出るタイプの肥料で、元肥や置き肥向きです。トマトやナスなど長期間育てる作物におすすめです。肥料切れを防ぎ、安定した生育が期待できます。
遅効性肥料
有機肥料に多く見られ、微生物による分解を経て効果が出るため、じっくり作物を育てたい場合に向いています。果樹栽培や土作りを兼ねた施肥によく利用されます。
使い方による肥料の分類
元肥
植え付け前や植え付け時に施し、根張りを促進します。元肥にはゆっくり効く緩効性肥料や有機肥料が適しています。
例:ジャガイモ植え付け時に堆肥とともに元肥を施す。
追肥
生育途中で追加で施す肥料です。開花期、果実肥大期などに、液体肥料や速効性肥料を使います。
例:トマトの花が咲き始めたらリン酸強化型追肥を与える。
ボカシ肥
有機物を発酵させた肥料で、通常の有機肥料より早く効きます。手作りもでき、家庭菜園や有機農業で人気があります。
お礼肥
収穫後に施す肥料で、翌年の収穫や木の体力回復を助けます。特に果樹栽培では重要です。
寒肥
冬季に施す肥料です。春の芽吹きを促すため、落葉期に株元に堆肥や有機肥料を施します。
例:柿の木、梅の木への寒肥。
芽だし肥
種まき直後や発芽期に与え、初期成育を助ける肥料です。苗のスタートダッシュを助ける役割があります。
形状による肥料の分類
固形肥料
粒状、ペレット状など固形化された肥料です。長期間じわじわ効くため、元肥や置き肥に向いています。
液体肥料
水に溶かして使用するタイプ。即効性があり、葉面散布や急な栄養補給に便利です。
例:ナス栽培での液体窒素肥料の追肥。
肥料と堆肥(たいひ)の違い
肥料と堆肥は、役割が異なります。間違えて理解していると、作物の生育に大きな差が出ます。
肥料と堆肥はどう違う?
- 肥料は植物に直接栄養を供給するもの。
- 堆肥は土壌改良を主目的とし、微生物の活性化を促します。
つまり、堆肥を入れても「すぐ栄養補給できるわけではない」ため、肥料とセットで使うのが基本です。
堆肥の役割とメリット
堆肥を施すと、土の中の微生物が活性化し、根が元気に張りやすくなります。水はけや通気性も改善され、作物が病気にかかりにくくなります。
特に重粘土質の田んぼや、連作障害が心配な畑では、堆肥投入は必須です。
肥料の効き方と特徴別の選び方
肥料は「どのくらいのスピードで効くか」によって大きく分けられます。作物や生育段階に応じて、最適なタイプを選ぶことが収量アップへの近道です。
速効性肥料の特徴と使い方
速効性肥料は、水にすぐ溶けて根から速やかに吸収されるタイプです。急な葉色の悪化や栄養不足を感じたとき、即効性が求められる追肥に最適です。
例:トマトやナスで実の肥大期に、窒素系液肥を追肥。
ただし、効きすぎるリスクもあるため、希釈濃度や施肥量には十分注意しましょう。
緩効性肥料の特徴と使い方
緩効性肥料は、施肥後じわじわと成分が溶け出し、長期間効果が続きます。元肥や置き肥に向いており、管理の手間を減らしたい時におすすめです。
例:ジャガイモ植え付け時に、緩効性タイプの化成肥料を使用して施肥作業を軽減する。
遅効性肥料の特徴と使い方
遅効性肥料は、微生物分解を経てゆっくり効果を表すため、有機栽培や果樹園向けに最適です。収穫まで時間のかかる作物(ぶどう、柿など)には特に向いています。
肥料の使い分け方|タイミング別のコツ
施肥のタイミングを見極めることで、作物の生育を最大限サポートできます。
元肥(植え付け時の施肥)
植え付けの際に施す元肥は、根張りと初期生育を支えます。施肥時は、作物の根が直接肥料に触れないよう注意し、よく耕しながら土と混ぜ込むのがコツです。
例:稲作では、田植え前に全面施肥して基盤を作る。
追肥(生育途中の追加施肥)
追肥は、生育ステージに応じた追加栄養補給です。開花期や果実肥大期など、エネルギーを多く消費する時期に施すと効果的です。
例:トマトの2段花開花後に速効性リン酸肥料を追肥。
肌肥(生育初期の肥料)
発芽・苗の初期段階に、成長を後押しするために少量施す肥料です。
例:キャベツの定植直後に液体窒素肥料を散布して活着促進。
待ち肥(育ち待ちの間に与える肥料)
育成がやや停滞している時期に与え、生育再開を後押しします。
例:イチゴ栽培で生育の鈍った時期に速効性窒素肥料を軽めに施す。
お礼肥(収穫後の回復肥料)
収穫後、体力を消耗した作物に施す肥料です。翌年の芽吹きや実付きをよくするため、必ず実施しましょう。
例:ぶどう収穫後、緩効性肥料と堆肥を株元に施す。
芽だし肥(発芽促進用肥料)
種まきや定植直後の発芽促進に役立つ肥料です。
例:ダイコンの種まき後に、少量の液体リン酸肥料を灌水。
寒肥(冬場に施す肥料)
寒い冬に施して、春の新芽に備える肥料です。
例:柿や梨に、寒肥として完熟堆肥と有機質肥料を株元に施す。
元肥・追肥それぞれにおすすめの肥料
用途に応じた肥料の選び方も大切です。
元肥に適した施し方とおすすめ肥料
全面施肥
畑全体に均一に撒いて、耕うんしながら混ぜ込む施肥法。一斉に作物を植える際に向いています。
例:麦や稲の全面施肥に緩効性化成肥料を使用。
溝施肥
植え付け列に沿って溝を掘り、その中に肥料を施す方法。必要なところに集中施肥でき、肥料のロスが少ないメリットがあります。
例:トマトの畝に沿って溝施肥。
おすすめ元肥:
- 有機質配合肥料(長期効果型)
- 緩効性化成肥料
追肥に適した施し方とおすすめ肥料
速効性の液体肥料や可溶性固形肥料を使用し、株元付近に軽く施します。水やり代わりに施肥する場合もあります。
おすすめ追肥:
- 液体窒素肥料(葉色回復)
- 液体リン酸肥料(果実肥大促進)
肥料選びでよくある質問Q&A
Q「元肥を多く入れすぎてしまったら?」
施肥過多は、根を傷めたり、塩害を引き起こしたりします。この場合は、まずたっぷり潅水して肥料分を流す「洗い流し処置」を行います。それでも改善しない場合は、苗の植え直しを検討しましょう。
Q「元肥を入れ忘れてしまったら?」
定植後に気付いた場合は、速効性の液体肥料でカバーできます。肥料濃度を薄めにして、数回に分けて与えることで、苗に負担をかけずに栄養補給できます。焦らず、段階的に追肥を行いましょう。
まとめ|肥料を正しく選んで植物を元気に育てよう
肥料にはさまざまな種類があり、成分・効き方・形状・使い方に応じて使い分けることが重要です。
適切なタイミングで、作物に合った肥料を与えることで、健全な生育と高品質な収穫が期待できます。
また、肥料だけに頼るのではなく、堆肥や土壌改良剤を併用して、土そのものの地力アップを図ることも大切です。
この記事を参考に、ぜひあなたの圃場でも、収量アップ・品質向上に向けた「肥料戦略」を実践してみてください!
監修者
人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。
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