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苦土石灰とは?肥料としての効果・使い方・注意点まで徹底解説!

「土が酸性だと作物がうまく育たない」農業に携わっている方なら、一度はそんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか?

実は、日本の畑や田んぼの多くは、雨や化成肥料の影響で酸性に傾きやすくなっています。この酸性土壌を放置しておくと、せっかく肥料を施しても養分が吸収されにくくなり、作物の生育不良や収量低下を招いてしまうのです。

そんなときに役立つのが「苦土石灰(くどせっかい)」です。

苦土石灰は、土壌の酸性をやわらげるpH調整剤であると同時に、作物にとって欠かせないカルシウムマグネシウムというミネラルを同時に補給できる優れた資材です。特にマグネシウムは、葉緑素の主成分として光合成を支えるため、葉の色ツヤや実の肥大にも直結します。

しかし、「ただまけばいい」というわけではありません。苦土石灰は施用量・タイミング・使い方を間違えると、逆に土壌や作物に悪影響を及ぼしてしまうことも。

例えば、まいた直後に苗を植えると根を傷めたり、過剰にまきすぎて土をアルカリ性に傾けすぎたりするケースが少なくありません。

この記事では、

  • 苦土石灰とは何か?
  • どんな効果があるのか?
  • 正しい散布方法と注意点
  • 消石灰や有機石灰との違い
  • 苦土石灰の代用品や不要な作物の例

まで、農家さんにもすぐに実践できるよう、わかりやすく具体的に解説していきます。
正しい知識を身につけ、あなたの圃場(ほじょう)をさらに豊かに育てる第一歩を踏み出しましょう!

農業には欠かせない!石灰資材の役割とは

農業を行う上で、「土づくり」は作物の出来を左右する最も重要な作業の一つです。その中でも、石灰資材は土壌環境を整えるために欠かせない存在です。

日本の土壌は雨が多い気候のため、自然と酸性に傾きやすい特徴があります。酸性が強すぎると、リン酸やカルシウムといった重要な養分が植物に吸収されにくくなり、生育不良を招いてしまいます。

石灰資材は、そんな酸性土壌を中和してpHを作物に適した状態に保つ役割を担います。さらに、カルシウムやマグネシウムといった必須ミネラルを土壌に補給することで、作物の根の発達を促進し、病気に強い体質を作る効果も期待できます。

苦土石灰をはじめとする石灰資材を上手に使うことで、健康な作物づくり、そして豊かな収量アップに直結するのです。

苦土石灰(くどせっかい)とは?その成分と特徴を解説

苦土石灰とは、主に炭酸カルシウム(CaCO₃)炭酸マグネシウム(MgCO₃)を成分とする天然鉱石「ドロマイト」を原料にした石灰資材です。

「苦土」という言葉は、マグネシウムの昔の呼び名で、カルシウムだけでなくマグネシウムも同時に補えるのが特徴です。

苦土石灰は、単なるpH調整剤としてだけでなく、作物に必要なミネラル供給源としても重要な役割を果たします。特に光合成を助けるマグネシウムの補給効果は大きく、葉の色艶を良くし、実入りを良くする効果も期待できます。

粒状タイプと粉状タイプがあり、作業環境や用途に応じて選べるのも魅力です。初心者の方でも取り入れやすく、失敗しにくい石灰資材といえます。

肥料としての効果・効能

苦土石灰は、カルシウムとマグネシウムという2種類の必須ミネラルを土壌に補給する効果があります。

カルシウムは作物の根や茎を強化し、倒れにくい丈夫な体づくりに貢献します。マグネシウムは、葉緑素(クロロフィル)の中心成分として、光合成を促進します。

これにより、葉の緑が濃くなり、作物の栄養状態が良くなり、結果として収量や品質が向上するのです。

土壌改良剤としての効果・効能

苦土石灰は肥料効果だけでなく、土壌そのものを健康にする「土壌改良剤」としての働きも持っています。

酸性に傾いた土壌を中和し、作物が必要とする養分を効率よく吸収できる環境を整えます。さらに、土壌の団粒構造を改善し、通気性・排水性・保水性のバランスを整える効果もあります。

これにより、根の伸びが良くなり、微生物の活動も活発になるため、土壌の「地力」そのものが向上します。

苦土石灰がもたらす主な効果とは?

苦土石灰を施用することで、土壌の状態が大きく改善されます。主な効果は2つ、酸性土壌のpH調整カルシウム・マグネシウムの補給です。

日本の土は雨によって酸性化しやすく、放置すると作物が必要とする栄養をうまく吸収できなくなります。

苦土石灰を使用すれば、作物が育ちやすい中性に近い土壌に整えられ、なおかつ成長に欠かせないミネラルも補給できるため、作物の健康状態が飛躍的に向上します。

特に光合成や根張りに悩みがある場合、苦土石灰の効果は絶大です。

土壌のpHを調整する

苦土石灰の代表的な働きは、「酸性土壌の中和」です。

pH6.0〜6.5前後が多くの作物にとって理想的な土壌環境とされていますが、酸性が強いとリン酸やカリウムなどの養分が固まってしまい、作物が吸収できなくなります。

苦土石灰をまくことで、土壌の酸性度を和らげ、作物が栄養素をしっかり取り込める土づくりが可能になります。

そもそも「pH」とは?なぜ調整が必要なのか

「pH」とは、酸性・中性・アルカリ性を示す指標です。0〜14の数値で表し、7が中性、7未満が酸性、7超がアルカリ性です。

日本の畑は自然と酸性に傾くため、作物がうまく育たない土壌になりがちです。

pH調整を怠ると、どんなに良い肥料を与えても効果が出にくくなります。だからこそ、苦土石灰でpHを整えることが、作物栽培の第一歩なのです。

土壌のカルシウムやマグネシウム分を補給する

苦土石灰は、酸性を中和するだけでなく、カルシウムとマグネシウムを同時に土壌に補給します。

カルシウムは根や茎の細胞を強くし、作物の倒伏を防ぐ効果があります。マグネシウムは葉緑素の重要な構成成分であり、光合成の効率を高める働きがあります。

この二つをバランスよく供給できることで、葉が鮮やかに育ち、実太りも良くなるため、収量と品質の向上につながります。

苦土石灰のメリットとデメリット

苦土石灰は非常に便利な資材ですが、メリットとデメリットを正しく理解して使うことが重要です。

メリットとしては、pH調整とミネラル補給を一度に行える点、デメリットとしては、即効性がないことや、他肥料との混用ができない点が挙げられます。

使用前にそれぞれをしっかり把握しておくことで、施用の失敗を防ぎ、最大限の効果を引き出すことができます。

◆メリット

1. 土壌中のCa/Mgバランスを保てる

苦土石灰はカルシウムとマグネシウムを適切なバランスで補給できるため、作物の根張りや葉の色づきが良くなります。特にマグネシウム不足が懸念される畑では、苦土石灰は効果抜群です。

2. 1つで2役を果たす(pH調整+栄養補給)

土壌の酸性を緩和しながら、ミネラルも同時に補給できるため、別々に石灰とマグネシウム肥料を施す手間が省けます。効率的な土づくりが実現します。

◆デメリット

1. 即効性は期待できない

苦土石灰の成分は土壌中で徐々に効いてくるため、まいてすぐに効果が出るわけではありません。施用後、最低でも2週間以上の養生期間が必要です。

2. 他の肥料と混用できない

苦土石灰は化成肥料などと混ぜると、化学反応によって養分の効果が弱まったり、逆に悪影響を及ぼしたりする場合があります。施肥のタイミングをずらすことが必須です。

苦土石灰の正しい使い方と散布方法

苦土石灰を効果的に活かすには、「いつ」「どのくらい」「どうやって」施用するかが非常に重要です。

基本は作付けの2〜3週間前に、適量を均一にまき、しっかり土と混ぜ合わせること。まいてすぐ作物を植えると、根を傷めるリスクがあるため注意が必要です。

また、土壌の酸度を事前に測ることで、施用量を無駄なく正確に調整できます。粒状と粉状の違いも理解して、畑の条件に合った方法で散布しましょう。

使用時期の目安

苦土石灰は作物を植える2〜3週間前が最適な施用時期です。

このタイミングで施用し、土としっかりなじませることで、酸性が中和され、作物がストレスなく根を張ることができる環境が整います。逆に直前に施すと、作物に悪影響を及ぼすため要注意です。

散布前に土壌酸度を測定しよう

苦土石灰の施用量を適正にするためには、土壌の酸度(pH)を測定することが必須です。

市販の土壌酸度計や試験液を使えば簡単に測れます。pHが5.5以下なら施用を検討し、pH6.0〜6.5を目安に調整しましょう。

無駄な資材コストを防ぎ、作物にとってベストな環境を作る第一歩です。

適量を均一にまき、土とよく混ぜる

苦土石灰は必ず均一にまくことが大切です。部分的に多く散布すると、pHがバラつき、作物の生育ムラを招いてしまいます。

クワや耕うん機を使ってしっかり土と混ぜ合わせ、表面だけでなく耕土層全体に行き渡らせることを心がけましょう。

約2週間なじませてから植え付ける

施用後は、必ず2週間以上放置して土になじませます。

この期間に石灰成分がゆっくり土壌に浸透し、急激なpH変動を防ぐことができます。すぐに作物を植えると根が傷みやすくなるため、焦らず準備しましょう。

粒状と粉状の違いについて

  • 粒状苦土石灰
    扱いやすく、風で飛びにくい。初心者や広範囲作業におすすめ。
  • 粉状苦土石灰
    速効性が高いが、飛散しやすいため注意が必要。プロ向き。

作業環境や圃場の広さに合わせて選びましょう。

苦土石灰の使用量の目安

苦土石灰の使用量は、1㎡あたり100〜150gが目安です。これはあくまで標準的な場合であり、土壌の酸性度によって増減させる必要があります。

例えば、pH5.0以下の強酸性土壌では、これより多めに施用することもあります。ただし、施用しすぎると土壌がアルカリ性に傾きすぎ、逆効果になるため、必ずpH測定を行ったうえで調整しましょう。

使用時の注意点|やってはいけない5つのこと

苦土石灰は非常に便利な資材ですが、使い方を間違えると作物に悪影響を及ぼすこともあります。

ここでは、特に注意すべき5つのポイントを紹介します。

散布時は必ず防護衣服を着用する

苦土石灰の粉末は非常に細かく、風に乗って舞いやすいため、マスク、ゴーグル、手袋の着用が必須です。

吸い込むと喉や肺を刺激し、目に入れば炎症を起こす可能性もあるため、安全対策を怠らないようにしましょう。

土壌の消毒には向いていない

苦土石灰はあくまでpH調整とミネラル補給を目的とした資材です。

病害虫や病原菌を駆除する「土壌消毒」の効果はないため、必要な場合は別途消毒用資材(消石灰や薬剤)を使用してください。

追肥には使わない

苦土石灰は基肥(植え付け前の土づくり段階)に使用するものです。

生育途中に追肥としてまくと、石灰分が作物の根に直接触れ、根傷みや成長障害を引き起こすおそれがあります。追肥には専用の肥料を使いましょう。

過剰使用は逆効果になる

石灰資材を入れすぎると、今度は土壌が強アルカリ性になり、鉄や亜鉛など微量要素の欠乏を招きます。

「たくさんまけばよい」という考えは危険です。必ず施用基準を守り、必要量だけを的確に施すことが重要です。

散布直後の植え付けは避ける

苦土石灰をまいてすぐに作物を植えると、未反応の石灰成分が根に悪影響を及ぼします。

最低でも2週間以上は土となじませ、pHが安定した状態で植え付けるようにしましょう。

苦土石灰の価格相場を知ろう

苦土石灰の価格は、10kg袋で300〜500円程度が一般的です。25kg入りの大袋なら、農協や資材店で1,000円前後で購入できる場合もあります。

価格差は、成分含有量(カルシウム、マグネシウムの割合)や形状(粉末・粒状)によって変わるため、購入前には含有成分と反応速度をしっかりチェックしましょう。
まとめ買いするとコスト削減にもつながります。

消石灰との違いは?その他の石灰資材との比較

苦土石灰の他にも石灰資材はいくつかあり、それぞれに特徴と用途が異なります。

消石灰

酸性中和力が非常に強く、短期間でpH調整が可能です。ただし、強アルカリ性のため取扱い注意。病害虫の土壌消毒に使われることもあります。

有機石灰

貝殻や海藻由来で作られている自然素材系の石灰です。土に優しく、有機農法や家庭菜園向き。ただし中和効果は緩やかです。

生石灰

水と反応して発熱する特性があり、強力な消毒効果を持ちます。農業用途ではあまり一般的ではなく、特別な用途向きです。

苦土石灰の代用品として使える身近な素材

苦土石灰が手に入らない場合、家庭にあるもので代用することもできます。

卵の殻

乾燥させて細かく砕くことで、カルシウム源として活用できます。即効性はありませんが、緩やかに土壌改良が進みます。

にがり

マグネシウムを豊富に含むため、微量要素の補給には有効です。ただし、ナトリウムも含まれるため、過剰使用には注意が必要です。

カキの殻

粉砕して使用すれば、カルシウム補給とpH調整の効果が期待できます。長期的な土壌改良に向いています。

乾燥剤や重曹は要注意

乾燥剤(シリカゲル)や重曹(炭酸水素ナトリウム)は、土壌に悪影響を与える可能性があるため、苦土石灰の代用品として使用するのは避けましょう。

苦土石灰が不要な作物とは?

一部の作物は酸性土壌を好むため、苦土石灰の施用が逆効果になる場合があります。代表的なものはブルーベリー、サツマイモ、ジャガイモなどです。

これらはpH5.0〜5.5程度の酸性土壌で元気に育つため、土壌を中和しすぎると生育不良につながります。

作物ごとの適正pHを事前に調べて、苦土石灰の使用を判断しましょう。

まとめ|苦土石灰を上手に活用して、健康な土づくりを

苦土石灰は、土壌のpH調整とミネラル補給を同時にこなす非常に便利な資材です。

ただし、「正しい使用量・タイミング・方法」を守らなければ、せっかくの効果を発揮できないばかりか、作物に悪影響を与えてしまうこともあります。

この記事で紹介した手順と注意点を押さえれば、失敗を防ぎながら、健康で収量の高い作物づくりができるでしょう。

まずは土壌の酸度を測り、必要に応じて苦土石灰を適切に施用してみましょう。正しい知識と実践で、あなたの畑をさらに豊かに育てることができます!

監修者

人見 翔太 Hitomi Shota

滋賀大学教育学部環境教育課程で、環境に配慮した栽培学等を学んだ後、東京消防庁へ入庁。その後、株式会社リクルートライフスタイルで広告営業、肥料販売小売店で肥料、米穀の販売に従事。これまで1,000回以上の肥料設計の経験を活かし、滋賀県の「しがの農業経営支援アドバイザー」として各地での講師活動を行う。現在は株式会社リンクにて営農事業を統括している。生産現場に密着した、時代にあった実践的なノウハウを提供致します。

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